前歯の指す方向

もう一度あの日に戻るとしても 同じ路選ぶだろう

「ありますよ、あります」の真意をあれからずっと考えている

Q嵐の再始動はありますか?

「ありますよ、あります」

 

会見翌日のNEWS zeroでの翔くんのこの言葉の真意を、放送を正座して見てからずっと考えている。仕事の合間に見たネットニュースに「嵐」の言葉があると。他のメンバーのCMを目にすると。TLで誰かが嵐の話題を出していると。ふとした時によぎるこの言葉と表情と発し方に考えを巡らしているうちに、季節は春になり、そして梅雨にまでなってしまった。

 

翔くんはいつでも不確かなことは言わなかった。雑誌で「好きな食べ物は漬物、嫌いな食べ物は漬物以外」っていう、大好きなピザはどうしたピザは!?みたいな捻くれを発揮したことも、大学卒業の囲み取材で「合コンって何?」っていう、すっとぼけた逃げ方(あくまでも合コン経験の有無ではなく、合コンというイベントの意味)をしたこともあったけれど、本当に大切な部分で嘘をついたことはなかった。

 

翔くんは嘘をつけない。「結婚したい」と言ってたかと思えば「結婚はリスク」と言うこともあった。世の中への反骨精神むき出しで、どストレートなメッセージを歌詞として発信していた。

 

「アイドルがどんなもんか見せてやるよ」

「外野の言葉はシカトする」

 

翔くんだけじゃなく、嵐自体も嘘をつかないグループだった。嘘をつけないというのか、誤魔化せないというのか。だから信頼できている。

 

お客さんを「恋人」扱いすることはない。「お客さん」「応援してくださっている方々」少しアイドルらしくしても「ファンの皆様」すごくビジネスライクかもしれないけれど、ステークホルダーとして良好な関係性だった。

 

嘘をつけなさすぎて悲しい時が1回だけあった。SMAP解散の日のカウントダウンコンサート終演のとき、先輩や同世代が「SMAPありがとう!」と叫んではけていく中、嵐は言わなかった。たぶん言えなかったんだろう。彼らは切ないほどに会社員だった。かつてのように「事務所内で俺らの優先順位は低い」なんて言ってた頃の環境じゃなくなってしまったんだなあ。

 

翔くんはストレートに答えたら語弊を生みそうな時、言葉を逡巡させる。目が動く。考える様子を隠さず、足りないと思えば補足する。

 

「うーん」「というのは」「つまり」

 

でも有働さんから問われたあの時、翔くんは一瞬も考えなかった。会見では再始動については全くの未定と言っていたのに、間髪入れずに答えていた。目も泳がせず、「わたし個人としてはですが」なんていう前置きもせず、きっぱりと真っ直ぐな言葉で言い切っていた。

 

再始動の予定は未定、というのが事実のはずなのに、再始動があると言い切った。今までなら、他の話題であったら、「個人的にはあると思います」「再始動ができるように、まずは2020年まで頑張ります」そう答えそうなものなのに。

 

「ありますよ、あります」

 

再始動があると言い切りたかったんだ、翔くんも。ジャニーズソングの中で好きな歌詞のひとつのように、信じる君がついた嘘ならそっと心にしまっておくつもりだった。

 

 

2019年4月13日、5×20のand more初日。そして発表があってから初めてのコンサート。私と師匠はナゴヤドームにいた。

 

師匠とはお正月ぶりにあったものの、合流してからお互いに「休止」というワードを出すことはなかった。

 

ただ、大野くんファンの師匠は、ファーストコンサートのうちわを持ってきていたし、ピカンチパーカーを着てきた。

 

今取り出さなくていつ取り出せるんだろうと思ったから、恥ずかしいけどね、ありがとうってさ」

 

ファーストコンサートの大野くん(のうちわ)にナゴヤドームを眺めさせる、こんな師匠を見るの初めてだった。

 

開演数分前にステージの裏側から大きな、本当に大きな声で掛け声が聞こえてきた。恒例の円陣を組んでいたんだろう。それをきっかけに会場中が立ち上がり、嵐コールを始めた。

 

あーらーし!

あーらーし!

 

嵐ファンは嵐コールもアンコールもいつだって手を抜かない。それにしてもこの日の一体感は鳥肌ものだった。

 

初めて国立競技場でコンサートを行った時、野外で7万5000人が嵐コールを揃えた。少し前まで事務所のお荷物って揶揄されてたグループが現れるその瞬間を、ファンがどんと構えていた。

 

今回もそれと似ていて、少し違っていた。5人は安心して出てこい!!!という気合と、お休みまでの本格的なカウントダウンが始まってしまう不安感を拭うための強がり、なのかな。

 

嵐コールから涙が出てきた自分に動揺した。

 

嵐に対して泣く感情がまだちゃんと捨てずに残っていたことにびっくりした。こんなつもりじゃなかった。泣くなんて思わなかった。休止をもって自分の感情も整理できるいい機会だとすら思っていた。それなのに全然涙が止まらなかった。

 

メインステージの上から現れた5人の表情が、ちょっと硬くて、でもイントロ部分のC&Rの驚くような大きさと揃い具合に表情が緩んでて、5人も会場中のファンも必死だった。

 

シングル曲メインで構成されているセットリストの一曲一曲が、どうしても当時の思い出につながった。インフルエンザで寝込んだ布団のにおいだとか、ようやく受験勉強を始めて学校のベランダから見た夏休みの空だとか、仲間たちと行ったゲレンデの風だとか、仕事に悩みながら走らせた車のフロントを打ち付ける雨の音だとか。

 

嵐は自分の人生のすべてではないけれど、間違いなく嵐は自分の人生の一部だった。

 

だてに20年近く追いかけてきたわけじゃなかった。

 

やっぱり嵐のコンサートは最高に楽しくて、翔くんの煽りは天下一品で、この時間がずっと続けばハッピーなのにって思うのはいつもと変わらなくて。でも過去のCDジャケットが次々と映し出されると、止まったはずの涙が出てきて。

 

メンバーひとりひとりの挨拶でも、それぞれが真摯に、笑いも取りつつ言葉を紡いでくれて、オートモードで涙が出てくるもんだからぬぐうことを諦めた。

 

しかも5人のうち4人が再始動前提だった。言霊ってあるもんね。嵐の言葉が実現していくことにワクワクして私もここまでやってきたよ。楽しかった。

 

でもさ、天邪鬼二宮先生の「ちょっと休むだけだからさ」はズルいってば。「台風ジェネレーション」の「じゃあ行ってくる、あ、さようならじゃないよね、また会えるから」みたいなノリで言わないでよ。ズルい。

 

会見の姿も、コンサートへの臨み方も、思いの伝え方も、すごくすごく嵐だった。自分の見てきた嵐。大好きだった嵐。

 

翔くんの挨拶
「I can't stop dreaming.Still dreaming.」
 
もうかなわないよ。自分の進んできた道とか姿勢とかに一番影響を与えた人は間違いなく櫻井翔くんで、その人にこんなこと言われたらさ、

わたし待つわ。(あみん)

 
Q嵐の再始動はありますか?
「ありますよ、あります」

この正解は誰にもわからない。でも見えない未来を掴むのも嵐っぽい。
かつて一旦は離脱しかけたけど(過去記事参照)我ながらよくここまで持ち直したなと思う。だから今はただ2020年末まで一緒に走る。そのために健康第一!